【VTuber業界の最前線とは?】
未経験からVTuberマネージャーを目指すためにまず知るべきこととは?
ソニー・ミュージックエンタテイメント
VEEプロデューサー渡辺タスクさんに聞く
今回実施したオープンキャンパスでは、
株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント VEEプロデューサー渡辺タスクさんをお招きしました。
2021年、Sony Musicによる史上最大規模のVTuberタレント育成&マネジメント事務所「VEE」の立役者。VEEオーディションでは1万8000人が応募し、選ばれた30名が活動中!
「もともとニコニコ動画に投稿していて、自分自身もクリエイターとして活動。2018年頃にVTuber『輝夜月』A&R担当として、株式会社ソニー・ミュージックレーベルズに入社。にじさんじ『月ノ美兎』A&Rを担当、その後もレーベル業務に従事しています。
VTuber活動の知見者になったので、社内では『Vの者』と呼ばれています。生放送は慣れていますが、講演は緊張します。どうぞ、よろしくお願い致します」とご挨拶。
<そもそもVTuberって?>
「2018年頃、VTuberが生まれました。おさらいしますと、伝説『キズナアイ』さんがバーチャルYouTuberを名乗り、『四天王』が5名誕生します。四天王を中心に、MCNという事務所のようなサポート組織が生まれます。個人勢も生まれて、VTuberが生放送を始めブームが動画コンテンツから移行します。そして、『にじさんじ』『ホロライブ』が誕生。VTuber事務所、個人、VR Chatアバターを持つ民などが生まれます」
<VTuberとは何か?定義は「絶妙」>
「進化&変化する領域なので、定義は絶妙です。本人も、関わる人も新しい何かを探しています。技術やプラットフォーム、発想の転換もあるので、業界全体が変わりうる世界です」
<どんなお仕事があるの?>
バーチャルYouTuberに携わるお仕事は、大きく「事務所」「スタジオ」「制作会社」「開発会社」の4つに分類されます。まずは、事務所所属のお仕事から。
――― 事務所 ―――
【マネージャー】
VTuberタレントのスケジュール管理から、制作物のチェック、事務所からの確認事項の共有、活動方針の相談まで幅広い。
「『人に向き合う仕事』、かつあらゆるプロジェクトの末端に属するので大変です!タレントさんのメンタルも支え、運営スケジュールを調整しないといけません。
毎日『Apex Legends』を配信するVTuberもいます。全部を聞きながら仕事を進めるマネージャーもいれば、終わって3倍速で見る人、Chat GPTに入れて解析する人もいます」
【運営】
事務所の運営を担う人。各タレントの実績レビューや、イベントの出演を決めたり、クライアントに提案したり、あらゆることをやる。
「ほぼ全部頑張る!みたいな人です。指示待ち人間だと困ります。率先して仕事を取ってきてくれる人が攻めのVTuber事務所には必要です」
【企画】
事務所でイベントや企画配信を推進する場合に、企画を考えて実行する人。運営と紙一重で、兼務するパターンも。
「ライブやファンミーティング、事務所主催イベントを立ち上げたりします。夏だし3人くらい集めてスイカ割りしますか?とか、その資料、タイムスケジュールを作ってチケットを販売します。目標値を設定し、予算をもらい動かします。結果が見える仕事だなと思います」
――― スタジオ ―――
【スタジオエンジニア/Unityエンジニア】
モーションキャプチャースタジオ/3Dスタジオに所属する。
「スタジオ機材の管理から、収録・生放送のオペレーションスタッフで、現場データを収録できるようにする人です。生放送は一発勝負なので、想定外のケースも予想して準備します」
【モーションアクター】
3Dキャラクターの振り付けを考えたり、実際に収録を行ったりする人。“振り作り”はコレオグラファーと言い、タレントに“振り渡し”をすることも。
「VTuber本人に振りを渡し、ロボットのように遂行することも。キャラクターによっては、モーションアクターがモーションキャプチャースーツを着て、アバターを動かすこともあります。モーションアクターは、声に合わせて演技をするので、特殊技能です」
【音響・照明・配信スタッフ】
生放送、収録の際にPA卓、照明卓、配信卓の前でオペレーションをする技師。Unityなどバーチャルだからこそ必要な概念もあれば、リアルアーティストと変わらない機材、スキルが求められることも。音楽ライブハウス出身もいます。
「バーチャル上の照明と現実の照明をやっていたりします。収録に備えて事前に作りこみ、仕込みもします。収録ライブの人といえどもとれるのは1-2回なので、リハーサルと仕込みに追われます。お弁当が早く食べられる人が多いです」
――― 制作会社 ―――
【制作進行】
クライアントから必要情報をもらい、確認、修正までを予想し仕事を進める。制作発注、企画立案から「進行する」という段階になると必ず入る。また、イラスト、映像、アニメーションなど幅広い業界で「制作進行」がいる。新人が務めることが多い。
「制作進行はスケジュールを組み、プロジェクトが滞りなく進むように動かします。「まだですか?」と、さまざまな人とコミュニケーションを取ります。締切をふっとばすクリエイターっているので大変ですが、たくさんの人と話すのが苦にならない人には向いています」
【3Dクリエイター・デザイナー】
イラストを動かす技術「Live2D」、3Dモデルを制作する技術「3Dモデリング」(Blender、Unity、MAYAなど)、それらを用いてMVなどの映像を作る技術「映像制作」(AfterEffects、C4D)など。
「ライブ2Dモデラーさん、キャラクターの三面図を見て立体的に作る3Dモデラーさん、ミュージックビデオを作るときは映像制作さんがいます。自分の矜持を持ちながら、クライアント、社会的に求められることを掴む能力が求められます」
――― 開発会社 ―――
【エンジニア】
プラットフォームなどシステム・ソフトウェアを開発する。VTuber事務所は、新しいものを開発する会社さんやベンチャー企業と仕事をすることが多い。
「今の世の中に満足しておらず、新しい何かを求めている人、物事の構造をとらえるのが上手で、客観的に見られる人は向いています。ちなみに、個々の役職は別の組織・会社に属する場合もあります」
【プロデューサー】
プロジェクトの責任者。
「人を集めて、プロジェクトを動かす人、いわば船長のような存在です。航海士が欲しい、料理長が欲しいと仲間を集めて、あっちに進もうと方向性を示します。クリエイティブのジャッジは、ディレクターさんが責任を持つこともあります。ライブをやる、新しソフトウェアを開発するのもプロジェクト。実際に、かじ取りをして進めていくのがプロデューサーです。やる!って言ってお金を集めて会社の承認を得ます。自分の意見を人の前で話せることが大事です」
プロデューサーは、「制作進行」出身、「ディレクター」出身、「クリエイター」出身などバックグラウンドはさまざま。「ユーザーの心を刺激するコンテンツを生み出すために、各々がそれぞれの視座から常に考えています」
<これからのVTuber業界はどうなる?!>
今後のVTuber業界を考えるうえで、3つの視点がシェアされました。
① 新しいプラットフォームには『新しいDIVA(歌姫)』が生まれる
➁ ゲーム実況を超えた、ドラマが生まれる
ゲーム実況は、もはや「リアルタイムでドラマを生み出す装置」になっている。この群像劇を配信以外の方法でドラマとして見せられないか?
③ 誰もが「アバター」を持つような未来がくる
講演会の受講生からも質問してみました!
<なぜ、事務所を作ったのですか?>
「昔から、クリエイターと関わることが好き。VTuberになるのは簡単です。絵を描いて、Live2Dを使えば実現できます。でも、そうではなくて、VTuberは、『関係性』が欲しい。友だち0人ではなく、コラボレーションをしてVTuber同士の化学反応が必要。だから、事務所という『ハコ』作って、やりたい人をいっぱい集めていく。クリエイターさんやタレントさんの場合、仕事を穏便に断りたくて事務所に所属することもあります」
さらに、「これからの時代は、UnityやMAYAなど 3Dを触れる人間がいちばん稼げると言われています。大黄金時代に、『金を取りに行くんだ!』と意気込んだ探鉱者よりも、つるはしとデニムを売った会社が儲かりました。同じように、Live2Dを作れる人など、ものをつくる側の需要はなくなりません」と、意見を述べました。
こうした貴重な展望が聞けるのも、業界とのコネクションをもつバンタンクリエイターアカデミーならでは。ぜひ、進路選択の参考にしてください!
【渡辺タスクさん|プロフィール】
株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント 「VEE」プロデューサー。
1988年茨城県生まれ。
2008年に、ニコニコ動画に投稿を始め、自身もクリエイターとして活動。南方研究所としてボカロP「ハチ」のMVなどを制作。初音ミクライブ「マジカル未来」演出映像制作。その後、LiSAのライブ映像制作に参加。
2018年、VTuber「輝夜月」A&R担当として、株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ入社。にじさんじ「月ノ美兎」A&Rを担当し、レーベル業務に従事。
2021年、Sony Musicによる、史上最大規模のバーチャルタレント育成&マネジメント「VEE」を立ち上げる。