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香盤の一行が、現場の一秒になる。 ――ASOBINEXT所属アイドル「pureran story」MV制作の舞台裏に密着

2026/07/31 (FRI)

「次、手前3人の顔ヨリで撮影します。メイクチェックしてもらえますか」――スタジオに、鈴木さんの声が通る。2026年6月18日、ASOBINEXT所属のアイドルグループ「pureran story」のミュージックビデオ『ワタシ革命』の撮影現場。

朝8時45分の機材積み下ろしから、夜20時のスタジオアウトまで、約11時間。この撮影を支えたのは、バンタンクリエイターアカデミーマネジメント専攻生26名だ。内訳は、プロデューサー1名、ディレクター5名、撮影部7名、照明部6名、制作部7名。香盤を引き、現場で進行を取り仕切り、セットを組み、キャストの呼吸を読む――その一つひとつの行動は、複数のバンタンクリエイターアカデミー生によって担われていた。エンタメ業界を目指す彼らが、プロの現場と地続きの撮影現場をどのように動かしたのか?その記録を追う。

『ワタシ革命』――かわいさを求め、変化し続ける

今回のMV『ワタシ革命』制作にあたり、バンタンクリエイターアカデミー生が考え抜いたコンセプトが「かわいさを求め変化し続ける」だった。ここでいう革命とは、昨日の自分より少しだけかわいくあろうと、日々を更新し続けること――その絶え間ない変化そのものを指す。女の子たちが互いの「かわいい」に影響を受け合い、変わっていく。MVは、その様子を一日の物語として描く。

pureran storyは、一人ひとりがメンバーカラーと明確なキャラクター性を持っている。グループのしっかり者・町田りの(まちだ りの)は水色。最年少で元気キャラ・瀬戸はる奈(せと はるな)はむらさき色。おおらかで天然ボケな能波彩乃(のなみ あやの)はぱーるほわいと。危うさと可憐さを併せ持つ橘柚(たちばな ゆず)はビビットピンク。穏やかで大人びた空気をまとう井上愛徠(いのうえ あいら)は黄色。

ストーリーはもちろん、衣装、セットの細部にいたるまで、その理解が反映されている。

9:00、スタジオに「部屋」が組み上がる

朝8時45分、スタジオ前に集合したバンタンクリエイターアカデミー生たちが機材を運び込む。9時、スタジオイン。最初の仕事は、何もない空間に「女の子の部屋」を立ち上げることだった。美術が用意したのは、2枚のラグマット、ブランケット、クッション、白いぬいぐるみ、白いテーブルクロス。ハートや星のモチーフを壁に貼りつけ、生活感のある一室「部屋風セット」を作っていく。

 

9時30分、撮影開始。進行・美術・制作の各セクションに散って現場を支える。

眠りから覚めるところから、一日は始まる

10時、朝シーンの撮影に入る。

香盤の冒頭に並ぶのは、目覚まし時計が鳴り、pureran storyのメンバーが一人また一人と起きていくカットの連なりだ。しっかりもののりのが時計を片手で止め起き上がる。まだ眠る仲間の肩をトントンと叩いて「起きて~」と起こし、愛徠は目を擦り、はる奈が柚を起こす。。ベッドの上で重なり合うようにして眠る5人が、寝起きの空気感で目覚めていく。演出の指定は細かい。りののセリフは音声としては使わないが、口の動きで何を言っているか伝わるよう、実際に声に出してもらう。ワンカット目ははりのを横から、次のカットは正面から――目覚めを2つのアングルで押さえる。寝起きという一般的な数十秒のシーンを、コンテは1カットずつ丁寧に、緻密に分解した。香盤は、いわば動画のコンテのようなもの。正確であればあるほど、詳細であればあるほど、完成度が高まる。

「緊張感はある。でも期待をこえたい」

撮影の合間、現場の進行を担うディレクター・鈴木さんは言う。

「午前中7分押しですが、後半にまきます。クライアント様ありきのプロジェクトなので緊張感はありますが、期待をこえていきたいと思います」

誰が・いつ・どのカットに入るかを事前に確定させ、当日は計画との差分を管理する。ヘアメイクさんに「次、手前3人の顔ヨリで撮影します。メイクチェックしてもらえますか」と声をかけ、制作部の牛山さんや林さんが段取りを一手に束ねていく。

セット転換の連続――ダンス、リップ、そしてUNO

現場は、セッティングと撮影の往復で進む。10時30分からは広めのセットに転換し、二番サビとラスサビのダンスを撮影。サムネイル候補のカットもここで押さえる。

13時には全員がベッドやソファに座ってのリップシーン(口元の歌唱カット)。続く13時45分には、ローテーブルを戻してUNOを広げ、机を囲んで遊ぶ「わちゃわちゃシーン」へ。愛徠がカードを出して彩乃がじゃれつき、はる奈がカードを切り、りのが一枚引く――その手元のインサートまでが香盤に組まれている。セット一つ、小道具一つにも段取りがある。次のシーンでUNOを使うなら、その前のセッティングでテーブルを戻し、ラグマットを敷き、カードを用意しておく。美術と進行が先回りして動かなければ、カメラは止まる。バンタンクリエイターアカデミー生たちは、撮影の裏側で時間を先読みする感覚を覚えていく。

ヘアアイロン、王冠、メンバーカラーのカーテン

14時過ぎ、愛徠の前髪をりのがヘアアイロンで直し、その後スロー映像でヘアメイクや服選びの様子が捉えられていく。夕方はpureran storyのメンバー一人ひとりのリップ撮影を行い、その後キッチンセットへ。彩乃が落ち込む姿から、はる奈が王冠をのせて「自分はかわいいんだ!」と立ち上がるシーンで、『ワタシ革命』のテーマが結晶する。終盤、彩乃とはる奈がスマホで自撮りにをし、愛徠が「行くよ〜!」と画面を横切る。二人が「行かなきゃ!」と追いかけ、りのと柚に合流して5人が揃い、画面の外へはけていく。18時55分からはダンスシーン。19時20分、撮影終了。20時、スタジオアウト。香盤の最後の一行まで、チームワークで走り切った。

現場ごとに、空気が変わる

制作部・石川さんは、現場を経験することの意味をこう語る。

「撮影現場の雰囲気を、体感することができます。企業SNS撮影・運用のインターンシップにもいっていますが、現場ごとに雰囲気が異なります」

同じ「撮影現場」でも、現場は一つとして同じものはない。教室では学べないその差分を、バンタンクリエイターアカデミー生は自分の体験を通して学んでいく。

インタビュー|講師・大内山哲志

制作をサポートするのは、ASOBINEXT所属・クリエイティブディレクターの大内山哲志講師だ。技術的なアドバイス、フォローは行うが、答えを先に渡すのではなく、バンタンクリエイターアカデミー生自身に考えさせる。

――11時間の撮影が終わりました。バンタンクリエイターアカデミー生の動きを見て感じることは。

「指示を待って動けない人もいれば、逆に『あれもこれもやらなきゃ』と頭がいっぱいいっぱいで、視野が狭くなっている人もいました。『人に仕事を振ることも立派な仕事である』ということを、覚えておいてほしいです。『これをお願い』と周囲を巻き込んでいけるようになると、現場の空気はガラリと変わります。」

―― 印象に残った場面はありますか。

「今回使用した機材はプロユースなので、質の高い映像が撮れる反面、“ジンバル”を含めてとにかく重い。使い慣れていないバンタンクリエイターアカデミー生は戸惑ったかもしれません。撮影の最後のほうは、みんな手がプルプル震えていました。それでも誰ひとり投げ出さず、最後まで必死に撮り切ってくれたことを評価します」

機材を片づけるバンタンクリエイターアカデミー生たちの表情には、安堵と、撮り切った達成感が宿っていた。そして彼らは、また次の現場へ向かう。

PROFILE

pureran story(ASOBINEXT所属)

町田りの(まちだ りの・水色)、瀬戸はる奈(せと はるな・むらさき色)、能波彩乃(のなみ あやの・ぱーるほわいと)、橘柚(たちばな ゆず・ビビットピンク)、井上愛徠(いのうえ あいら・黄色)の5人からなるアイドルグループ。

大内山 哲志(おおうちやま てつし)/ ASOBINEXT所属 クリエイティブディレクター

日本大学芸術学部放送学科卒業。大学在学中にフリーランス業を事て業化し、会社設立・CCOに就任。映像・写真、デザイン・SNS運用など幅広く活躍。現役の演者経験も活かした、的確なディレクションと演出に定評がある。バンタンクリエイターアカデミーの講師として、学生とともに映像制作に携わる。

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